TS-520 VFO(5MHz帯)を発振周波数3.5MHz帯、7MHz帯、10MHz帯へ変更するための改造です。
TS-520 VFO (変形クラップ発振回路) の発振周波数を変更する改造を行いました。
変更周波数帯は、3.5MHz帯、7MHz帯、および10MHz帯です。3.5MHz帯と7MHz帯は再生受信機、10MHz帯は7MHz受信機 IF3395kHzのローカルとして使用予定です。
LC共振回路-FETゲート間の直列Cは実験により値を決めました。詳細は「TS-520VFO 周波数変更その2 (実験編) 」を参照して下さい。
周波数変更に伴い、他の部分も変更が必要となります。変更箇所を以下に示します。
1) RIT回路切り離し
2) 出力フィルタ変更
3) ダイヤル回転方向の変更
4) 発振回路のコイル変更
5) 発振回路のコンデンサ変更
TS-520 のVFO UNIT(X40-1070-00)の回路図は他のwebを参照して下さい(BAMA等)。
改造仕様を下表に示します。
改造仕様
Δfは、バリコン可変による発振周波数変化幅です。
L0、C0はfmaxを発振させるために必要なコイルとコンデンサの値、ΔCはバリコン可変幅を示します。L0とC0でfmax、L0と(C0+ΔC)でfmin発振です。
fmax、fminは変更することができます。その際に必要となるC0、L0の計算式等については、「TS-520VFO 周波数変更その2 (実験編) 」を参照して下さい。
C4を除去します。
TS-520 VFOの出力フィルタは1MHzから7.5MHz付近までのBPFとなっているようです。そのため、10MHzは帯域外となり変更が必須です。7MHz帯は7.0〜7.2MHzで約+2.1dBの偏差があることから変更しました。3.5MHz帯は偏差0.1dB程度で変更不要ですが、このVFOの設計と同様、2倍波を阻止する変更を行いました。3バンド共、3倍波以降の減衰量は12〜16dBと大きくはありません。
以下に変更後の回路を示します。
(1)3.5MHz帯用出力フィルタ
C15とC17は5pFから10pFへ、C16は10pFから22pFへ変更です。
変更後の回路
変更後の周波数特性(シミュレーション)
(2)7MHz帯用出力フィルタ
C16は10pFから5pFへ変更です。
変更後の回路
変更後の周波数特性(シミュレーション)
(3)10MHz帯用出力フィルタ
L5は22uHから6.8uHへ変更です。
変更後の回路
変更後の周波数特性(シミュレーション)
今回の周波数変更に伴い、ダイヤル右回転で周波数が高くなる方向へ変更が必要です。
右廻りでバリコンの容量が減じる方向です。これには、まず、バリコンのストッパー(ネジ)を外し、次に、ダイヤルツマミを左に廻し切ってギヤ側のストッパーに当たる状態で羽根を180度回転させ、全体がバリコン本体に収まるように変更します。
左がストッパー(ネジ)の位置、右がネジを緩めたところです。金属の羽根にかからないようにしています。
「ダイヤル右回転で発振周波数上がる方向へ変更するため羽根の位置を変える。」ことを思いつき、webで確認したところ先人 (*) がおられました。TS-520 VFOを7MHz帯へ改造しておられます。
*:「自作(パクリ)ラジオ製作の勧め」
1)3.5MHz帯用コイル (L0=5.39uH)
TS-520 VFOのコイルを巻数変更なしで流用しました。コアはほぼ廻し切っています。
2)7MHz帯用コイル (L0=1.20uH)
TS-520 VFOのコイルの巻数を21Tから8Tへ変更しました。コアによる調整可能とするために、巻数を減ずる際はコアから遠い側から外します。
3)10MHz帯用コイル (L0=0.529uH)
2種類作りました。
・TS-520 VFOコイル:巻数4T。コア調整しやすい位置へ調整が必要。
・TS-510 RF UNITに実装されていたコイル:巻数変更なし。コア調整。
ユニバーサル基板へ実装してL金具でイタへ取り付けました。(写真はTS-510 VFOです。)
変更箇所
コンデンサの変更箇所を下図 (左) に示します。
変更対象はCaとCbです。CcとCdは対象外とします。
「改造仕様」表中のC0は、C0=Ca+ (Cb、Cc、Cdの直列接続) です。
Cb値は実験により求めました。詳細は「TS-520VFO 周波数変更その2 (実験編) 」を参照して下さい。
変更箇所 |
TS-520 VFOの部品番号および定数を上図(右)に示します。ここではQ1ソース出力側C9(=3pF)以降は無視しています。
Ca、CbとTS-520 VFO部品番号との対応は以下の通りです。
Ca=VC(MIN)+TC1(TYP)+C1+C20+C2+C3
Cb=C5+C6
この内、変更対象Cは以下の通りです。
Ca ⇒ C1、C20、C2、C3
Cb ⇒ C5、C6
追加コンデンサ
今回のコンデンサ変更は全て追加する方向となりました。追加コンデンサの値を下表に示します。
温度変動を抑えるために温度補償コンデンサの採用は必須です。
追加コンデンサ
改造手順
ステップ1)事前準備
・RIT回路切り離されていることを確認する(C4除去)。
・設計インダクタンス値のコイルL0が実装されていることを確認する。
・TC1を中央付近へ調整する。
・電源、周波数カウンタ、オシロを準備する。
ステップ2)実機へ追加コンデンサ実装、発振確認
・追加コンデンサを実機へ実装する。
・発振することをオシロで確認する。
ステップ3)Ca追加コンデンサの微調整、発振起動確認
・「改造仕様」表中のfminへ近づけるため、周波数カウンタで実測しながらCa追加コンデンサ値を微調整する。この時、バリコンVCはmax。
・電源をON/OFFし、確実に発振することをオシロで確認する。
・周波数カウンタにより、VCを可変してfmax、fminが「改造仕様」表中の値に近いことを確認する。この時、必要ならTC1にて微調整する。
・出力レベルはTC2にて調整する。調整後は再度発振周波数を確認し、必要ならTC1にて再調整する。
ステップ4)周波数安定度確認(必要に応じて)
・必要に応じ、常温にて起動3分後から30分経過後の周波数変動を測定する。
(TS-520仕様では±100Hz以内)
改造後の実測値を下表に示します。表中の「設計値」は、比較しやすくするため「改造仕様」表を実測値fminに合わせて計算し直したものです。
設計値と実測値
設計値と実測値でほぼ一致した結果が得られています。
TS-520 VFOを発振周波数3.5MHz帯、7MHz帯及び10MHz帯へ変更する改造について記載しました。
今後、改造したVFOを再生受信機やスーパー受信機へ活用していく予定です。