01版 2022.04.18
TS-520用VFOを改造した再生受信機です。回路構成および回路採用ミスによる失敗作です。
これまで、「TS-520VFO 周波数変更その1 (改造編)」および「TS-520VFO 周波数変更その2 (実験編)」において発振周波数変更の実験・改造を行ってきました。
それは、再生式受信機製作のための事前準備としての実験でした。
しかし、その前に、発振周波数を大きく変更しない、生のTS-520VFOで再生式受信機を作ってみようと考え、実験したのが本試作機です。
構成は7MHz帯から5MHz帯へ変換するダウン・コンバート方式です。
試作の結果、問題が2つあることが分かりました。
以下、回路構成、改造内容、問題および使用感他について簡単に記載しています。
VFO(写真左)と改造後の基板「VFO UNIT X10-1070-00」(写真右)です。
VFO改造前後の構成を下図に示します。
構成図(改造前後)
回路を最大限利用する構成としました。
7.0M〜7.2MHz帯から5.0M〜4.8MHz帯へダウン・コンバート後再生検波しています。
発振回路OSC(Q1)はTC1により発振周波数を500kHz程下げ、再生検波回路へ変更しています。
再生制御は発振回路ソース電流を調整し、同時に非線形特性を利用して検波も行っています。
発振回路以降の全回路は前段へシフトさせています。
初段のAMP (Q2) はMIX回路へ変更し、ローカルをQ2のソースへ注入しています。
RF入力7.0M〜7.2MHzを5.0M〜4.8MHzへダウンコンバートしています。
ローカル信号12.0MHzは、VFO外部へ水晶発振回路を設け、入力しています。
BPFは中心周波数f0=4.9MHzの単一同調回路へ変更しています。
BUFF (Q3) とBUFF (Q4) は回路、定数共に変更していません。
失敗作のため改造内容の記載は一部のみとしました。
発振部を再生検波部へ変更する部分のみを記載します。
1)RIT回路切り離し
C4を除去する。
2)発振周波数変更
(1)方法その1(C追加無し)
5.5〜4.9MHzを5.3〜4.7MHzへ変更。
<調整>
・ダイヤルを廻して目盛り「300」へ設定する。(バリコンVC1の羽根1/2)
・TC1を中央へ設定する。
・受信機で5.000MHzを受信する。
・L1を廻して発振周波数が5.0MHzとなるように受信機で確認しながら調整する。
(バッファ回路無く、プローブ使用不可のため受信機で確認。)
(2)発振周波数変更 方法その2(C追加有り)
5.5〜4.9MHzを5.0〜約4.5MHzへ変更。
<調整>
・C2へ並列に10~15pF (温度補償:黒) を追加する。
・ダイヤル目盛り「0」へ設定する。(羽根を抜いた状態)
・TC1を中央へ設定する。
・受信機で5.000MHzを受信する。
・L1を廻して発振周波数が5.0MHzとなるように受信機で確認しながら調整する。
4)再生検波回路へ変更
Q1ドレイン-電源間へドライバトランス追加、C16容量変更、電源周り変更、および
ソース側L1-アース間へR101,VR101追加。(下図参照)
今回、ドレイン負荷のドライバトランスは仕様不明(実測815Ω:150Ω)の中国製トランスを使用しました。トランス変更により負荷が変わりますので、VR101の値を適当に変更する必要があります。
2つの問題が発生しました。
問題1:5.0MHz〜4.8MHz信号の通り抜け
問題2:再生検波回路ー他回路間の信号リークによる異常発振
問題1
現象:
5.0MHz〜4.8MHz信号の通り抜け。レベルは7MHz帯受信信号と同等もしくはそれ以上。受信に致命的な支障あり。
調査:
RF入力からBUFF回路出力 (再生検波回路入力) までを調査。
7MHz→5MHzへの周波数変換後のレベルと5MHz帯入力→5MHz帯出力のリーク量を測定。
レベル調査
結果、ほぼ同一レベル(1.6dB差)を確認。
原因:
入力側同調回路のf0=7.1MHzに対する5MHz帯減衰不足および周波数変換回路における5MHz帯入力→5MHz帯出力へのリーク大。
対策:
(1)入力FIL追加と、(2)周波数変換回路をバランス型へ回路変更が望ましい。
FILは5MHz帯において最低でも60dB以上の減衰が必要。夜間等は受信機入力へ7MHz帯信号を超える5MHz帯信号が入力することも考慮すると、更に20〜30dB以上の減衰量が必要となると考える。
今回は、(1)のANT−本体間へ5MHz帯を阻止する7MHz BPFを実装し、リーク信号が聞こえない程度まで改善することを確認した。
問題2
現象:
VR101により発振強度を徐々に強めていくと、ある点から急激に最大振幅へ変化する。
調査:
再生検波部の発振信号が隣接する回路へリークし、正帰還ループを形成していると思われる。
リーク箇所調査のため、部品実装、プリントパターン調査が必要だが、調査断念。改造量大となる可能性あり。
原因:
回路調査断念のため問題箇所特定していない。
対策:
本現象は発振強度を極端に上げた場合の現象であり、異常発振直前までは正常に再生受信動作している(但しリークは存在している)ことから、再生調整範囲は多少狭まるものの、今回は特に対策しないこととした。
以上の2つの問題から、回路間のリーク対処は困難なので、回路構成に注意を払う必要があることが分かりました。今回のように、RF入力信号を内部回路を通して再生検波回路へ入力する構成は実装上およびパターン配線上、帰還ループ形成を助長する構成となり、避けるべきでした。
失敗作ではありますが、再生検波部分は問題なく良好に動作していますので受信の様子を動画にしました。
ここでは強力な7MHz BPFを前段に挿入しています。
聞きやすい良い音をしています。
周波数変換後の4.9MHz同調回路のQが高く、バンド内で調整が必要でした。回路再考が必要です。
ダイヤル目盛りにほぼ合った変化をするので大凡の受信周波数は分かります。
今回は発振周波数の大幅な変更を避けるため再生検波前段へ周波数変換回路を設けた構成としましたが、変換後の周波数が受信周波数に近い構成となり、通り抜け問題が発生しました。
また、このような構成においては、MIX回路は入出力間リーク軽減のためバランス回路が望ましいことも分かりました。
更に、発振回路-他回路間にリークがあり、発振強度を上げると正帰還ループを形成して異常発振することもわかりました。
以上から、今後は発振回路を除いた他回路は、RF増幅回路や、MIX回路等への流用は避け、本来のバッファ回路として使用すべきであることが分かりました。
TS-520 VFOを改造して周波数変換方式による再生式受信機を試作しました。今後、TS-520 VFOの発振周波数を7MHzで発振する改造を行い、7MHz帯を直接受信する再生式受信機を試作予定です。