01版 2020.10.22
FT-101用VFOを改造した7MHz再生受信機です。「VFO UNIT」の回路構成を変更し、RF AMP+再生検波+外部カウンタ用バッファとしました。AF AMPはVFOケース外部に設け、簡単のため市販LM386モジュールを使用しています。
以前から、メーカ製トランシーバの高安定LC発振VFOを再生受信機に利用できないかと考えていました。
先日、OWADYNE(*)を製作して再生受信機の素晴らしさに惹かれ、早速、VFOの改造に挑戦しました。
オークションで入手したFT-101 VFO(写真左)を改造しています。VFO内部の基板は「VFO UNIT PB-1056」(写真右)です。
改造に当たり、回路図と実装図を以下から入手しました。
回路図:「HF SSBトランシーバ回路図集」 CQ出版社 P.406 FT-101B@
実装図:「YAESU FT-101 SERIES SERVICE MANUAL」 Radio Amateur.EU P.103
以下、改造内容や試験・調整について述べます。
*:「差動アンプ方式7MHzオートダイン受信機の製作」
JARL QRPクラブ会報 2018年 9月30日発行 Vo.61-05
改造前後の構成を下図に示します。
構成図(改造前後)
回路図(全体)
LM386モジュールはAliexpressから購入しました。
<図M-1> OSC (旧OSC)部 改造図
心臓部の再生検波部です。ここでは大きく分けて5つの改造を行いました。
(以下の発振周波数変更関連(1)及び(2)については「FT-101用VFO改造」を参照)
(1)RIT回路の除去
(2)発振周波数の変更(8.7MHz~→7.0MHz~。目標可変範囲:200kHz以上)
(3)7MHz信号入力用Lの追加
(4)再生発振強度調整および検波のためのバイアス調整回路の追加
(5)AF信号抽出回路追加
(1)は上図の通り。(2)は120pF(C104)を追加。(3)は、RF AMP部からの信号をL1ボビンへ1回巻き(L101)。(4)は、VR10kΩ(VR102)と750Ω(R101)により調整可としました。(5)のAF信号の抽出には、部品点数削減のためOWADAYNEを参考にドライバートランスST-17A(T101:実際には相当品)を使用しています。C105は高周波ゲインの抑制、C106はAF帯インピーダンス低減用です。
L101(写真右)とL1との間隔は約4〜5mmとしました(写真左参照)。
<図M-2> AMP (旧BUFF)部 改造図
外部周波数カウンタでモニタするためのアンプ部です。旧回路をソース接地型に変更してドレインから取り出しています。
因みに入力は、OSC部FETのソース側から10pF(C4)を通していますので、AF帯検波信号成分はカットされています。
<図M-3> RF AMP (旧BUFF) 部 改造図
RF AMP部です。元回路はドライバ回路ですが、回路および定数は変更していません。ただし、610kHz付近の異常発振防止のため、C10へ390pFを並列に追加しました。
他周波大信号を抑えるため、入力には同調回路が欲しかったのですが実装スベースの問題があり、今回は無しとしました。特に問題は発生していません。
異常発振防止 (RF AMP部)
負荷側C11を除去したことや入力線の引き廻しが影響したためか、610kHz付近の強烈な異常発振があり、コンデンサ390pFをC10へ追加して対策しました。
発振周波数範囲調整 (OSC部)
発振周波数を下げるため120pF(C102)を追加しました。安定化のため温度補償用(黒色)セラコンを使用しています。
発振周波数範囲はTC1、TC2を調整し、7.000kHz〜7.188kHzとなりました。範囲200kHzを満足できていません。範囲を拡げるにはL1巻数を減ずる必要があります。今後の課題としておきます。
発振強度変化範囲調整 (OSC部)
VR102を最も右へ廻して0Ω、この時、適度な発振強度になるようにR102(750Ω)を決めました。発振が強すぎると受信ノイズ、信号が聞こえなくなります。
尚、発振開始時のレベルが低く、また、飽和近傍レベルまでの変化が緩やかな程、発振強度調整がスムーズであることが分かりましたので、実験の結果、Q1の2SK19GRを2SK241Yへ変更しました。実験したFETは2SK19GR、2SK241Y、2SK241GR、および2SK439Fです。2SK241Yは発振開始、レベル変化の何れも良好でした。デバイスのばらつきも無視できないかもしれませんが、そこまで踏み込んで調査していません。
AF増幅利得調整 (AF AMP部)
受信状態で適度な音量となる様、LM386モジュールの半固定ボリウムを調整しました。ほぼ中央です。
選択度が甘く、混信や近傍の大入力によるマスクや引張り現象は、作り上あたり前のこととして諦めるしかありません。
その点を除けば、安定度、感度、雑音、音量、音質のすべてに大満足しています。取り組んで本当に良かったと一人ほくそ笑んでいます。負け惜しみではなく、デジタル処理された不自然なヒュルヒュル音とはまるで異なる自然な音の雑音、検波時の適度に耳障りの良い音声歪みや、ダイヤルをゆっくり廻しながら徐々にSSB復調されていく感覚がなんとも言えない心地よさを与えてくれます。
CW受信音もきれいです。混信があっても音色で聞き分けることができるのでほとんど問題ありません。開局当時の7MHz CWバンドは大混信の時代でしたので鍛えられたのか、むしろ混信があると安心します。運転初心者の昔、渋滞に遭遇した際の他車との一体感を覚えて緊張が解けたのと似ています(共感は得られないと思いますがhi)。
動画中の受信機フロントパネルはダイヤルが見えるように左上部を切り欠いていますが、切り欠きが小さかったこととダイヤル盤が奥まったところにあるために良く見えません。これは失敗でした。受信周波数は「AMP部」へ周波数カウンタを接続してモニタするのが良いかもしれません。尚、ダイヤル盤は回転方向に合わせるため、TS-520 VFOのダイヤル盤を使用しています。
メーカー製VFOを改造して再生受信機を製作することができ、かねてからの念願を叶えることができました。今後はブラシュアップして更に満足できる受信機に仕上げていきます。
FT-101用VFOを改造して再生受信機を作りました。今後、再生発振と検波の分離、AGC、メータ回路追加等の実験に取り組みます。