4066局発回路

01版 2013.06.15
00版 2012.10.16
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 「4066発振回路」では、アナログスイッチを使用した発振回路の実験を紹介しました。ここでは、その実験結果を基に、455kHzセラミック発振回路の±1.5kHz発振の調査と適用例としてSSB復調用局発回路を紹介します。
 一般にVXOでは、周波数可変幅を拡げるためコイルを追加しますが、ここではコイル無しで±1.5kHzの変化が可能か実験しています。


条件

  1)IC
    ・HC4066
    ・4066
  2)セラミック発振子
    ・型名    : CSB455E
    ・周波数   : 455kHz
    ・初期偏差 : ±2kHz
  3)電源電圧変動
    ・5V±0.2V
  4)周囲温度
    ・室温

調査回路

 ±1.5kHz発振調査のための調査回路を図2−1に示します。
 C1およびC2(いずれもセラコン)の容量については、特に測定による選別は行なっていません。


図2−1 調査回路

測定結果

 表2−1に±1.5kHz発振の測定結果を示します。(セラミック発振子等、部品特性のバラつきが大きいため、以下の測定データおよびそれに基づく結果の再現性について保証するものではありません。)

                     表2−1 測定結果

    ○:正常発振。±1.5kHz超   △:正常発振。±1.5kHz以内  ×:異常発振又は発振不安定
デバイス   HC4066 4066
発振
周波数

455kHz
+1.5kHz
近傍
C1,C2   82pF 47pF
R2    1kΩ 1kΩ 5.1kΩ 5.1kΩ 1kΩ 1kΩ 5.1kΩ 5.1kΩ
R3    1kΩ 5.6kΩ 1kΩ 5.6kΩ 1kΩ 5.6kΩ 1kΩ 5.6kΩ



+5.2V × × ×
+5.0V × ×
+4.8V ×
発振
周波数

455kHz
-1.5kHz
近傍
C1,C2   183pF 168pF
R2    1kΩ 1kΩ 5.1kΩ 5.1kΩ 1kΩ 1kΩ 5.1kΩ 5.1kΩ
R3    1kΩ 5.6kΩ 1kΩ 5.6kΩ 1kΩ 5.6kΩ 1kΩ 5.6kΩ





  
+5.2V
+5.0V
+4.8V


 下の図2−2は、表2−1の「HC4066」で異常発振箇所(×印)のある「発振周波数455kHz+1.5kHz近傍」の測定データを示しています。
 同様に、図2−3は「4066」のの測定データを示しています。
図2−2 電源変動(HC4066)


図2−3 電源変動(4066)



 図2−2(HC4066)では◆マークがありませんが、3点全ての電源電圧で異常発振となるため記載していません。「82pF、1k、5.6k」の組み合わせでは、4.8Vと5.0Vでは正常発振しましたが、0.2V UPの5.2Vで異常発振しました。又、周波数に着目すると、455.8kHz近傍から発振が不安定となることが分かりました。

 同様に図2−3(4066)においても「47pF,1k、1k」の組み合わせでは4.8Vでは正常発振しましたが、5.0V及び5.2Vにおいて異常発振しました。
 しかし、4066はHC4066とは異なり、周波数456.5kHzを超えた457.0kHzにおいても不安定となることはなく、正常発振しました。

結論

 測定結果より、

  1)公称周波数455kHzより1.5kHz高い方の周波数近傍において、HC4066は4066より低い
    周波数で異常発振する。

      ・HC4066は+0.8kHzまで正常発振するが、超えると異常発振する。
      ・4066は+1.5kHzを超える周波数まで正常発振する。

  2)公称周波数455kHzより1.5kHz低い方の周波数近傍では、HC4066及び4066の何れも
    安定して発振する。

<回路定数の決定>
 今回の実験により、発振周波数はC1,C2だけでなくR2及びR3も関係し、これらの組み合わせによって決まることが分かりました。(当然、発振子および4066の特性も関係します。*)
 従って、回路定数の決定は以下の方法によるのが良いと結論します。

  1)R2およびR3
    「4066発振回路」において実験した結果を踏まえ、R2=5.1kΩ、R3=1kΩとする。

  2)C1およびC2
    R2及びR3定数を確定した上で、希望する発振周波数となる様、実験により決定する。
    今回の実験では以下の通り。

      ・HC4066の場合
        ・455kHz+1.5kHz近傍・・・異常発振のため確定不可
        ・455kHz−1.5kHz近傍・・・C2=C3=180pF近傍

      ・4066の場合
        ・455kHz+1.5kHz近傍・・・C2=C3=47pF近傍
        ・455kHz−1.5kHz近傍・・・C2=C3=170pF近傍


(* : 発振周波数の高い方で、デバイス遅延も少なく、AMP特性としても高域まで延びている筈のHC4066が、4066よりも正常発振の限界点が低いという結果が出た事は以外でした。)


 

局発回路(例)

 次の3つの局発回路(例)を示します。出力波形は矩形波ですので、高調波成分そのものや漏れ等が問題となる箇所へ使用する場合には注意が必要です。当HPでは「4066復調回路(DAF)」においてSSB復調用ミキサのローカルとして以下の「453.5kHz局発回路」を使用しています。

    1)456.5kHz局発回路
    2)453.5kHz局発回路
    3)455kHz±1.5kHz周波数可変局発回路

 出力側には負荷の影響を回避するためバッファを設ける必要があります。また、1)および2)において、SSB復調後の高域ノイズ成分が耳障りに聞こえる場合、発振周波数を455.0kHzへ近づける様VC1、C1及びC2を調整する必要があります。

 1)456.5kHz局発回路

 

図3−1 456.5kHz 局発回路(4066)

  左図に回路図を示します。

 この回路は、IF455kHzのLSB復調用局部発振回路として使用できます。(*)

 使用ICは4066です。今回の実験では、HC4066は455.8kHz付近を超えると異常発振する結果となりましたので載せていません。


* : 例えば、シングルスーパーヘテロダイン方式における10Mバンド以上のUSB受信では、受信周波数より455kHz高いローカル周波数と混合して得られる差の周波数455kHzを中心周波数とするIFにおいては、USBが反転してLSBとなります。このLSB復調には、455kHzより1.5kHz高い456.5kHzの局発が必要となります。

 2)453.5kHz局発回路

 下図に4066とHC4066を使用した453.5kHz局発回路を示します。これらは、IF455kHzのUSB復調用局部発振回路として使用できます。(*)



図3−2 453.5kHz 局発回路
* : 例えば、上と同様、シングルスーパーヘテロダイン受信機における7Mバンド以下のLSB復調では、IFにおいてUSBとなり、局発は455kHzより1.5kHz低い453.5kHZが必要となります。

 3)455kHz周波数可変局発回路

 下図に4066による周波数可変局発回路を示します。USB及びLSB復調の局発として周波数455kHz±1.5kHzまでの連続可変ができます。R7およびC3はVR1を可変した時の電圧変動吸収用です。

 また、マルチ受信モードの受信機へ適用する1例として、USB、LSB、CWの受信モード切替SWと連動してD1へ与える電圧を切替えることで、必要な3種のローカル周波数を得ることができます。



図3−3 周波数可変局発回路(4066)


 アナログスッチを使用したセラミック発振子によるSSB復調用局発回路の実験と適用例について紹介しました。 
 この応用例は「4066復調回路(DAF)」を参照下さい。