02版 2016.06.06
01版 2013.06.16
7MHz帯専用SSB通信型受信機です。
シングルスーパー「QR-73J」構成をベースとして、第1IF 12.288MHz、第2IF 455kHzのダブルスーパー構成としました。VFOはTS-520用VFOを改造して使用しています。
3種のフィルタ自作と組み上げ後のスプリアス対策に時間がかかりましたが、QR-73Jと比較してノイズの少ない、相互変調歪にある程度強い受信機ができました。
外観
ケースは自作です。メインダイヤルツマミの左はVUメータを利用した周波数表示用メータです。2個のスイッチは将来の機能追加のための予備。
構成
7M BPF、RAC、440DAF、DRD79、VFO及びPSから構成しています。
VFOはオークションで入手したTS-520用VFOを改造したものを流用しています。
回路図
「RAC」の高周波アンプはJ310パラによるGGアンプ、ミキサはDBMとしました。何れも「トロイダルコア・活用百科」(*1)を参考にしています。
3種のBPF(「7M BPF」、「12M BPF」、「455k BPF」)はすべて自作です。
「7M BPF」は、セラミック発振子6個を使用した帯域約180kHzのルーフィングフィルタです(*2)。
7Mバンド上下の隣国からの夜間の強力な放送による相互変調歪の改善に抜群の効果を発揮しています。すばらしいフィルタを公開されたJA3NPLさんに感謝します。
「12M BPF」は8個の12.288MHz水晶発振子、「455k BPF」は5個の465kHzセラミック発振子による、何れも帯域3kHz弱のSSB用ラダー型フィルタ(*3)です。JA9TTTさんのCQ誌連載記事により、念願だったフィルタ自作の経験ができました。
「455k BPF」はできるかぎり中心周波数を455kHzに近づけたかったので、中国製465kHzセラミック発振子を使用しました。100個から選別してSSB用11グループ、CW用2グループに組み分けすることができ、SSB用の最も周波数の高いグループを使用することにしました。中心周波数は452.5kHzです。最も低い周波数のグループは448.1kHzでした。
「440DAF」はTCA440と「455k BPF」、SSB検波およびAF増幅回路から成ります。これは、QR-73Jで使用した「440M」と「DAF」を一つのPT板にまとめたものです。
自作「455k BPF」の中心周波数が455kHzより低いため、BFOの発振周波数も低くする必要があります。低い周波数ではBFOの発振起動が不安定でしたので、安直ではありますが、+5V電源電圧をダイオード1個分下駄を履かせて安定化しました。
「DRD79」(上図参照)は、受信周波数をアナログメータにより表示する「DDM-R2R」へ中国製DDSモジュール(AD9850)を追加したものです。低消費化のため発振器は125MHzから48MHzへ変更しました。DDSモジュールについてはJA9TTTさんの記事があります(*4)。
PICファームにより、電源立ち上げ時のみDDSの周波数設定を行い、その後、周波数表示動作を行います。
ポート不足のため、RA0をDDSの*FUPとして使用し、ダイヤル表示動作中LSBは"L"固定としました。
入力回路は、JA3SFBさんの回路(*5)を参考にしました。(JA3SFBさんのHPはハード、ソフト共にいつも参考にさせて頂いており、教科書的な存在です。)
「MCNT」はメータの針を勢い良く振らせたかったのでアンプゲイン可変とゼロ調整ができるようにしたものです。
「PS」は、オンボードのAC/DC(+12V)と三端子レギュレータ(+9V)から供給しています。
< PT製作データ >
・RAC(確認図、部品面版下、ハンダ面版下)
・440DAF(確認図、版下)
・DRD79(確認図、版下)
*1 :「改訂新版 定本 トロイダル・コア活用百科」CQ出版社 山村秀穂 著
*2 : JA3NPLさんのHP「JA3NPL web」「2. 7MHz帯ルーフィング・フィルタ」
*3 : JA9TTTさんの記事 CQham radio 2006年1月〜4月
「簡単に作れるラダー型クリスタル・フィルタ 第1回 クリスタル・フィルタと方式の違い」 CQham radio 2006年1月
「簡単に作れるラダー型クリスタル・フィルタ 第2回 水晶振動子の調べ方」 CQham radio 2006年2月
「簡単に作れるラダー型クリスタル・フィルタ 第3回 ラダー型クリスタル・フィルタの設計」 CQham radio 2006年3月
「簡単に作れるラダー型クリスタル・フィルタ 第4回 測定ツールの製作」 CQham radio 2006年4月
*4 : JA9TTTさんの記事
「中国製500円DDSモジュール試用レポート」 トランジスタ技術 2014年1月
*5 : JF3SFBさんのHP「電子工作etc」 「周波数カウンタV6」<図3>
VFO
VFOにはTS-520のVFOを改造して使用しています。
VFOを小型ケースへ収容するためには下の左の写真の様に、コ型の板が大きくて邪魔になります。そこで、VFOは横に寝かせて高さを低くすることにしました。
更に、コ型の板を作り替えて縦、横共に短くし、その板へL板を両側に取り付けてシャーシへ固定する構造にしました(写真右)。
取り付けの詳細は「TS-520用VFO改造」に記載しています。
改造前 |
改造後 |
ダイヤル表示
加工前 加工後
ケース製作
QR-73Jに使用したケースと同サイズの市販ケース(LEAD AM-5)を使用する予定でしたが、VFOが大きくて収容できないため自作しました。
組立・配線
RAC、12M BPF 440DAF、455k BPF PS (右)、7M BPF (左:撮影漏れ)
DRD79(配置変更前) DRD79(配置変更後)
PT板配置(変更前) PT板配置(変更後)
完成
試験・調整
○DDS周波数設定およびBFO調整
TCA440の混合部の第2ローカル信号(固定周波数)はDDSから供給します。DDSへの設定周波数の決定とBFOの周波数調整は以下の要領で行いました。実際にSSB交信局を受信しながら調整する方法です。但し、各フィルタの特性およびPT個々の単体動作は確認済みとします。
1) 12M BPFの中心周波数f01=12287.0kHz、455k BPFの中心周波数f02=452.5kHzとする(何れも実測値)。
2) 440DAFのVF1端子へSGから12.7395MHz(=f01+f02)を与え、QR-75Jを受信状態とする。
3) 交信中の局を受信し、受信レベル最大となるようにダイヤルを合わせる。このとき正常に復調されていなくてもよい。
4) SGの周波数を可変し受信レベル最大となる様に合わせる。このとき正常に復調されていなくてもよい。
5) 音声復調正常となる様BFOを微調する。
6) SG出力を周波数カウンタで計測する。→ 実測値12.739490MHz
7) DDSへ設定する値を上の計測値から算出し、設定する。(DDSの発振器の周波数偏差は補正)
8) DDS出力を上の6)と同一カウンタで計測し、SG出力との周波数差が100Hz以下となるまで設定値を追い込む。
→ 実測値12.739500MHz
9) DDS出力をVF1端子へ接続し、音声が正常に復調される様、BFOを微調する。
ダブルスーパー受信機は初めての製作でしたので手探りの調整でした。1年以上前に制作したので当時の詳しい調整方法は良く覚えていません。動き始めると調整に夢中になってメモを取るのをすっかり忘れていました。上記の調整要領は当時を思い出しながらまとめましたので間違いがあるかもしれません。
○ノイズ対策
当初のPT実装配置では440DAFの455kHz BPFがPS近傍であったためAC/DCのスイッチングノイズに悩まされました。440DAFの実装向きを変更してBPFをフロント側に配置した結果ノイズが無くなりました。
○スプリアス対策
組み上げ当初はスプリアスに相当悩まされ、対策に多くの時間と労力を費やしました。
以下に主な対策を示します。
・アース強化
・RAC及びDRD79の実装配置変更
・VFO-440DAF間インピーダンス変更(470Ω→50Ω)
・RACのVFOからの入力部へLPF追加
・第1IF周波数変更(BPF:12.000MHz→12.288MHz)
使用感他
7Mルーフィングフィルタ、帯域約3kHzの第1IFフィルタの採用により、夜間の強力な放送局による相互変調歪はQR-73Jと比較して明らかに改善され、バンド中が静かになることに驚いています。しかし、夜間のコンディションによってはまだ影響を受けることがあります。そのような場合には減衰器がほしくなりますが、現在のところ無くても十分に満足しています。
7MHzルーフィングフィルタの切れは素晴らしく、7.18MHzを越えると急に静かになり、何も聞こえなくなります。一時、アンテナケーブルが断線したのかと勘違いした程でした。
第1IFと第2IF共に約3kHzのBPFを使用しているため、フィルタの切れがシャープで混信除去に効果を発揮しています。
QR-73Jと比較して若干感度が低い様です。第1ミキサの前に変換損失を補う程度の約10dBのRFアンプを入れていますが、3種の自作フィルタの挿入損失をカバーする程度のアンプも必要かもしれません。後日データ取得予定です。
受信ノイズは多少気になります。それでもQR-73Jよりはかなり良くなっています。ノイズ低減のための改善箇所は特にありませんので、この理由は分かっていません。
SSB復調音声は、QR-73J同様、高音域が削げ落ちているような、メリハリのない音に聞こえます。感度不足、復調回路、BFOキャリア調整あるいは外部スピーカの特性によるものなのかよく分かりません。ただし、良く言えば柔らかい音なので、聞いていて疲れません。
全体的には非常に満足しています。そのこともあってか、受信機としての特性データを未だ取得していません。そのため、定量的な比較データを提供できていませんが、今後提供予定です。
現在、QRP送信機の実験中です。この受信機と組み合わせてセパレート型送受信機として完成させ、交信に成功することを目標にしています。
ダブルスーパー構成の通信型受信機の製作について紹介しました。IP3測定後追記予定です。