QT-71J


01版 2018.12.22 
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7MHz CW専用3W送信機です。ロータリーエンコーダによる方法と外部受信機のローカル周波数に自動追従する2つの送信周波数可変モードがあります。後者に「FDDS-VFO」を採用、送信部は「DDSTX」を使用しました。

 

はじめに

40数年ぶりの送信機製作です。

SSBまで手が廻りませんのでCW専用とし、設計が楽な3WQRP送信機としました。ブレークイン方式ではなく、敢えてシーメンスキーによる送受切替方式としています。

自作受信機と接続することを念頭に設計しました。そのため、VFOには「FDDS-VFO」を採用しています。
FDDS-VFO評価機ではプログラムメモリサイズの制限から止む無く機能限定版としましたが、PICデバイス変更、プログラム見直しおよび縮退化を行い、課題としていた殆どの機能を追加することができました。

外観

ケースはLEADのAM-5です。

左端のSWは昔懐かしいシーメンスキー。送信機にはどうしても使用したくなります。トルク軽減のため、操作レバーには5cm程のスペーサを使用して引き伸ばしています。(約半世紀前の高校クラブ局の送信機の真似です。TX-88Aにつけペンのペン軸が取り付いていました。当時の流行りだったのでしょうか?)

周波数表示は7セグLED表示器を使用しました。送信機には正確な周波数表示が欲しいので、QR-73Jに使用したアナログ表示は止め、止む無く採用しています。それでも、出来る限りレトロ感を出すため、液晶表示器は敢えて使用しませんでした。

フロントパネルの塗色はアイボリーです。この色を背景に黒色文字が良く映えるので、好みの色です。白無地フィルムのインクジェットプリンタ専用ラベルを使用しました。


フロントパネル



ブロックダイヤ


ブロックダイヤグラムを下図に示します。

本機は、各種制御を行うFDDS部、DDSと増幅回路から成るDDSTX部、アンテナ切替を行うANTSW部、表示・操作を行うDISP/CONT部(本略称は回路図では特に表記していません。)及びPS部から構成しています。

フロントパネルにはモニタ用のボリュウムがありますが、今回は回路検討中のため記載していません。


ブロックダイヤグラム

受信機からのローカル信号(RX LOCAL)はFDDS部のアナログ-TTL変換「ATC」を通りPICへ送られます。PICでは入力周波数を計数し、DDS送信周波数設定データへ変換・格納します。

送信時(SEND ON)、KeyによるTX ON/OFFに従い、PICはデータをDDSへ送ります。データには、SEND ON直前に格納した送信周波数設定データおよびTX ON/OFFのためのPower Down等が含まれます。

DDSTX部のDDS出力は2段増幅および電力増幅後、LPFを通してANTSW部へ渡されます。

ANTSW部ではCONT/DISP部からの送受切替信号によりSW切り替えを行い、送信時はDDSTX部からのRF信号をANTへ出力します。

以上はVFO EXTモードの場合ですが、INTモード時は外部入力は切り離し、送信周波数はフロントのロータリーエンコーダにより行います。(ここでは、EXT及びINTモードは、VFOの出力周波数をそれぞれ外部及び内部情報により変更するモードを云います。)

回路


FDDS

高速コンパレータLT1016を使用した波形整形モジュールATCとPIC16F648Aから構成しています。
クロックはPICのタイマ2により入力周波数計数のためのゲート時間50msを得るため、5.24288MHzとしています。

7SEG LED

中国製の8桁モジュールです。
PIC16F648Aとのインターフェースはシリアルで、データとクロックはDDSと共用しています。

DDSTX

終段C級増幅3W。詳細は「DDSTX」を参照願います。

SW

アンテナ切り替え回路とLED消灯型SWR回路(*)から成ります。SWR回路は整合状態を大まかに把握するには便利だろうと追加しました。LED消灯型ではなく、点灯型にできないか検討しましたが、回路が増えそうなので止めました。

PS

スイッチングレギュレータです。スイッチングノイズの影響を心配しましたが、これまでのところ、送信出力スペクトル等に影響は見られません。

機能

主な機能を示します。

1)VFO動作モード

EXTモード : 外部信号(受信機ローカル等)へ周波数追従
INTモード : 内部DDSにより独立動作(出力周波数はロータリエンコーダにより可変)

2)送信周波数LOCK機能 ・・・ VFO 「EXTモード」時

ロックON :送信周波数を固定する。ON以降、送信ON,OFFに関わらず、「ロックOFF」検出まで継続。 
        ・電源ON時
        ・交信終了から最初の「送信ON」検出時
ロックOFF:送信周波数固定動作を解除する。
        ・設定ロック範囲外れ検出時
        ・強制解除時
強制解除 :送信周波数固定動作を強制解除する。
        ・「LOCK OFF」SW押下
        ・送受切替キー「CAL」側へ押上

3)CAL機能

送信周波数を校正する。
シーメンスキーをCAL側へ倒すとDDS出力ON。この状態で受信機のビート音を聞きながらF.ADJ(SW及びロータリーSW)で送信周波数を調整する。

4)オフバンド監視機能

上限および下限周波数をファーム検出中、送信を禁止する。


製作

製作過程をPDF文書にしました。「QT-71J製作」(281kb)
IF=455kHz受信機接続用ファームをここ(hexファイル)に置きます。

測定


本装置の出力は3Wですので、スプリアスは-48dBc以上あれば規格を満足します。
2倍波、3倍波成分が大きいですが、スプリアス領域の全成分が基本波に対して-48dBcを上回ることは無いと判断できます。


今回、スプリアスで最も心配した点は、受信機からのローカル入力信号の漏れでした。IF=455kHz受信機(ex.QR-73J)のローカルと接続する場合は、送信周波数に対して455kHzUPの信号です。上の測定結果を見ると、ノイズに埋もれているのか全く見えません。拍子抜けしましたが、前置増幅部同調回路を高Q(Q=20,BW=350kHz)としたこと、基板分割および簡易シールドが功を奏したのかもしれません。

使用感他

キャリブレーション時のビート音が隣接した受信機からほとんど聞こえません。PT板化による短配線、ケース収納によるシールド効果のため、DDS出力の漏れを拾えないようです。

F ADJ(ディップSW)により、受信周波数へ楽に合わせることができます。60Hzの周波数ステップは、現在支障はありませんが、多少荒いかもしれません。可変周波数範囲ももう少し広げたいところです。パネル取り付け用ディップSW入手難のため、今後は他の方法を検討します。

送信時の周波数ロック解除方法が3通りあり、全てスムーズに操作できます。特に、受信周波数をずらす方法は違和感をほとんど感じません。

昔からのシメンスキーによる送受切り替えは好きで気に入っているのですが、実運用では近年の超簡単スタンプQSOにはなじまないことが良く分かりました。次回はセミブレークイン方式とするか悩みそうです。

TSS、総通申請

本装置はTSS経由東北総通の許可が下りています。

最初は、周波数追従部分を除いて申請し、許可が下りました。その後、周波数追従部分の機能追加及び附属装置追加申請を行いましたが、何れも申請不要となりました。

TSS見解では、周波数追従機能部分は電波の型式や質に関わる部分では無く、機能追加申請不要とのことです。ロータリーエンコーダによる周波数変更と同等と考えて良いようです。関連して附属装置(信号発生装置等)の追加申請も不要となりました。

TSS申請時の修正前と修正後の送信機系統図を以下に示します。


送信機系統図(修正前)


送信機鶏頭図(修正後)



FDDS VFOとDDSTXを使用した7MHz CW送信機を紹介しました。本機と受信機QR-73JによりQRP CW通信を楽しんでいます。